店長の部屋

商売の難しさ

兄からのSOS

私には2人の兄がいます。一人は今 一緒に住んでいますが、もう一人の兄が家を出て商売をしています。

そんな兄からSOSが入りました。直接的なSOSでは無かったのですが、いつもと様子がおかしかったので兄の所に行ってみました。

一人で戦って来た兄

兄は地方でラーメン屋さんを営んでいます。この店は私達の父が生前始めた店で父が亡くなった後、母が引き継ぎ、その後 兄が引き継いだ店です。

兄は22年間、その店の経営者と店長の二刀流で営んで来ました。

この22年の間、私が知らない苦労も痛みもあったと思います。もちろん良い事や成功も多く合ったと思いますが、人間痛みの方がより強く覚えている物で弱っている時に失敗すると、かなり凹みますよね。

そんな状況の中でも亡き父が残してくれた店を守ろうと必死だったようです。

 

多くの個人経営の飲食店様は、経営者 兼 店長として両立されていると思います。看板もレシピもメニューも独自で開発されて提供し、お客様の満足を勝ち取っていらっしゃると思います。

兄の店はチェーン店であり加盟店契約をしている為、個人店のハードな部分は本部が被ってくれますが、別の側面で色んな縛りが発生します。メニュー、営業時間、仕入れなど勝手に変える事が出来ないマイナス面が存在します。

まだ先の見えないコロナ渦だけではなく、今年に入り物価や光熱費の高騰により多くの飲食店様が大変なご苦労を強いられていると思います。私の兄もその内の一人でした。

壊れる寸前

続けなければダメだ。でもどうやって?

見えなくなって来たゴールを手探りで探しながら模索し続けて来たけど、もう一歩も歩けない。

兄以外のスタッフは全てアルバイトのスタッフ達。経営者としてこの先どうして良いか誰にも相談出来ずに一人で悩んでいた様です。そして次第にやる気が無くなり全てを終わらせたいと考える様になって来ました。

 

私が会った時も兄の底抜けに明るい表情や話し声が無くなって、立ち振舞からも伝わる「元気がない」が気になりました。

その時の一番の悩みは「極度の人不足」。その次に「売上」

自分の時間を削ってシフトに充ててもどうにもならず、アルバイトの求人を出しても手応えなし。スタッフが増えるアテもない。この先確実に減っていく既存のスタッフ達。店を開けていても誰も利用しない時間もあり、ただいつ来るか分からないお客様とバイトの応募を待ち続けている状態でした。

完全に負のループ状態でした。

 

「じゃ、私が店を手伝うよ」

私は自分自身の経験が店に役立てれば良いな。兄のモチベーションになれば良いなと思い、手伝う事を提案しました。この先の事は分からないけど、この状態から打破出来るお手伝いをしたい。そう感じて申し出ました。

最初は「悪いよ」とか「手伝ってもらっても先が無い」とか断っていましたが、最終的に「お願いします」と承諾してくれました。

 

私も店に入り既存のスタッフからオペレーションを教えてもらって、店の運営に携わりました。初日はスタッフとオペレーションに慣れることに必死でした。久しぶりの長時間労働、なかなかキツかったです。

2日目も開店準備から閉店作業まで店に立ちました。3日目も同様。

早くも私が堪えました。店が忙しければ余計な事を考えなくて良いのですが、ただお客様を待っている時間は本当にキツかったです。私が店長をやっていた時は常にお客様が来店していたので、少ないスタッフでどう対応するか?手の空く少しの時間をどう使うか?ばかりだったので、ただ待つという時間をどう過ごすか?は考えた事も経験もありません。でも忙しく必死に動き回った方が何倍も楽だと改めて気が付きました。

「これを一人でやって来たのか・・・」

私の経験なんて、何一つ役に立ちませんでした。兄は店を投げ出したい気持ちもありながら、守らなきゃいけない使命感でここまでやって来たことを痛感しました。

私が信じてきた事

商売の三原則は『人・物・金』と昔から決まっていますが、どれが掛けても成り立たない事に痛感しました。

〝人〟が全てだと思っていた

お客様・店舗スタッフ・業者と多くの人が関わりますが、人に恵まれれば必ず成功すると信じていました。

これまでの私の経験では、人が人を呼び良い関係性を築いていれば失敗する事は無いと思っています。

私は店に入り、マイナスの要因になる関係者を探しました。これを探しだせば店は立ち直ると思ったのです。

でも、いないんです。マイナス要素の人が。

スタッフも店の為に一生懸命働いているし、とにかくお客様が良いんです。お馴染みさんが多く会計の時に「ご馳走様!」と声を掛けて下さる方ばかり。店はとても良い雰囲気で、店とお客様の距離がとても近いんです。それに応えようとスタッフは更に頑張る。と言った具合で見ている私もホッコリしちゃう光景でした。

兄は一人で来ているお客様の中から、話しかけて欲しそうな人を見抜き食べ終わった頃合いに声を掛けていました。声をかける対象は一人で来る年配の男性が多かったのですが、とても嬉しそうに話をしていました。私は「凄いな」と思いました。兄になぜ話しかけたのか?と聞いたら「だって話かけてもらいたい雰囲気だったから」と、サラッと答えていました。「そういう店を目指しているんだよ」と。

兄の目指している理想の店舗はとても明確で自分のポリシーを持ち、それがブレていない事に驚きました。

ここまで徹底して運営出来ているのに、なんでこんなにモチベーションが下がってしまったんだろう?と、より謎に思いました。

結局、人が原因では無かったのです。

飲食店は根性論?

毎日同じ時間に店を開けて、同じメニューを用意し、変わらないサービスを提供する。自分の体調やモチベーションは関係なく、必ず同じものを用意しないとお客様は離れていく。足繁く通って頂くには、どんな時も安心して利用出来る店にしないといけません。

この『変わらない』が難しい所で、自分の気分や体調は表に出せないのです。

誰でも気分が乗らない時も、調子が悪い時もあります。でもそれを表に出せないのは、なかなかキツイです。どんな時でも踏ん張らないとダメだ!と自分で奮い立たせるのも限界があるものです。

そのモチベーションを保つ方法は人それぞれありますが、兄は自分で追い込むような方法をとってしまったのかもしれません。

そして人は老いる。前は出来た事もだんだん出来なくなるし気力も続かない。そのギャップに焦りを感じる。でもやらきゃ!忍耐と根性!

でも、これでは誰でも壊れちゃいますよね。

一昔前は根性論が正義でした。でも今は自分をもっと大切にする生き方、それに伴って無理の無い仕事の仕方が正当な方法です。楽しく発展のがあって持続可能な飲食店を目指さないと、お客様は離れていく様な気がします。そもそも新しいスタッフが寄って来ないですよね。

経営者の難しさ

最初から上手に出来る人はいない。失敗をし痛みを知って、やっと成功に辿り着く。

知っている筈なのに、経営となると「失敗は許されない」「自分だけじゃない。従業員はどうなるんだ」余計な取り巻きのせいで正しい判断が鈍ります。責任者の重圧が重く圧し掛かりますよね。

でも経営者も人間です。完璧に出来ません。

バランスの取り方

プライベートと仕事。スタッフやお客様との距離のとり方。店のキャパシティとメニューの量。店への投資の金額。

沢山のバランスを求められるのが経営者です。

以前、私が努めていた飲食店のオーナーは、一気にグループ店舗を増やし、私から見てもやりすぎなんじゃないか?と感じた事がありました。私は思い切ってオーナーに訪ねました。

「何でこんな急にグループ店舗を増やすんですか。」

オーナーは少し考えて、こう答えました。

「みんなをHAPPYにするには、この方法しかないんだよ。」

この時はその意味が半分位しか理解出来ませんでしたが、今なら解る気がします。きっと将来の経営と、今の投資のバランスを考えての決断だったと思います。店舗や機材などの減価償却資産を抱えて、拡大の選択を選んだんだと思うと凄い人の下で働いていたな、と感じます。

今となっては、オーナーのこの決断は成功であり良かったのですが、経営者の抱えている責任は私の想像を絶するものだと思います。

日本全国に400万の企業があるのですが、全ての経営者様に心より敬意を表します。

大切な物は何か?

将来の夢だと思います。

「最終的には○○になりたい」

これが一番大切な事だと思います。それを目的に長期的な目標と短期的な目標を立てて日々邁進する。必ず夢に近づく事が出来る。頑張れる原動力になる。

これに尽きると思います。

兄は、途中で夢を失ってしまったんです。そこから歯車が狂いだしてモチベーションが下がってしまったんだと思います。年齢的にも体力的にも改に夢を持つのは難しいです。

夢って凄く大切な物なんだ、と痛感しました。

今回、私が学んだ事

先にも話しましたが〝人〟さえ押さえていれば、店は上手く運営出来る!そう信じていましたが、そんなに簡単な事ではありませんでした。当たり前の事なんですが・・・

今回の兄の店を手伝って感じた事は、情熱が大切な事だと思いました。

ブレない夢・ブレない目標・ブレない信念

達成させる事が難しいと判断した時に軌道修正が出来る様に、少しだけ冷静な自分も持ちつつ、後は自分の熱を下げない様に自己啓発を怠らないようにする!

もう一つ必要な方法。

自分の夢を他の人に宣言する

13年前、マクドナルドのプロモーションで『BIG MOUTH 夢をでっかく語ろう』がありました。そのCMで、当時水泳選手の北島康介選手が「オリンピックで優勝する!」と宣言し本当に金メダルを獲りました。北島選手はインタビューで「思っているだけでは叶わない。口にする事で現実になる」と語っていました。

自分の夢を人に語るのは恥ずかしいです。大人になればなる程 恥ずかしいです。でも口にした以上、自分も頑張れるし回りの人達も応援してくれます。それが自分の活力になりモチベーションに繋がります。

幾つになっても夢は持ち続けて叶えられる様に努力する事が大切なんだと、今回の件で感じました。

最後に・・・

ここまで読んで頂きありがとうございました。

アスリートや起業家で成功した方も、皆んな自分の夢を信じて努力した結果です。

成功した時の事を考えると凄くワクワクしますよね。当然、失敗したり挫折する事もあるかもしれませんが、達成した時は全部チャラになると思います。

経営者には沢山の要素が求められると思いますが、原動力は夢があって、これを実現する為には何が必要か?何をすれば夢が叶うのか?から始まるんですね。

私も、でかい口を叩いてでっかい夢を掴みたいと思います!

ABOUT ME
satchon
当ブログにご訪問頂きありがとうございます。 自由に生きたい!本気で切実に願うアラフィフオンナ(^‐^)vです。 25年間 大手飲食店で勤務してきた経験や、日常の些細な事を気ままに語る雑記ブログです。

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